先に書いておきますが、リタイアのためダブルフルではなく61キロ走でした。「今回の経験がみなさんの役に立てば」というReiさんの意向で、あえて詳細を伝えたいと思います。意図を汲んで読んでいただけると幸いです。
萩往還100kに向けてReiさんから80k走のコースメイク&ペーサー依頼を受けたんですが、この2人のツイートに反応しないわけにはいきません。「30k地点が鳥取に近い」ことに加え、萩往還を想定して、アップダウンが強烈なダブルフル=84.39kmのコースをつくりました。
倉吉駅からスタートし、蒜山高原を抜け、大山は大神山神社(おおがみやま)に参拝し、伯耆大山駅(ほうきだいせん)まで走る山岳系コースです。
距離も最長なら負荷も過去最高。ハードなコースです。しかも電車に遅れるわけにはいかないので時間にも追われます。そのためReiさん自身、緊張していたそうです。
また、かなりしっかりとしたカーボローディングをしていたとのこと。
目標タイムは12時間に設定。1km7分で7キロ走り、7キロあたり11分までの休止(エイド、信号、トイレ)で走れば12時間。ちょっとややこしいですが、萩往還の制限15時間に十分間に合うペース換算になります。
7キロを1つのステージとみなし、各区間を1時間で走ることを目標にしました。ウルトラは全体を把握するのが難しいので、細かく区切って目標を持つと楽ですね。
ステージ1 倉吉市街地
スタート地点は倉吉駅。電車で戻ってくる予定なので駅スタート。1日停めても1000円でした。
ギアは私はhyper speed、Reiさんはクリフトン7。激坂ウルトラなのでスピードクッション系で攻めます。
また、装備は入念に。支払い手段を揃えて補給や移動に備えつつ、途中補給することを想定して荷物は最小限に。ハイドレは空で準備。
軽いアップ(本当のアップ笑)ののちスタート。フラット区間は6:30くらいで快調に進みます。しかし、決して無理はしない。無限に走れるくらいの負荷。このペース配分がウルトラには求められますね。
街中ランなので、とくに普段と変わりなし。ほんのり上りですが、貯金ができるペース。
朝は雲がかかり天候としても快適でした。
第一チェックポイント、ジュンテンドー到着。約10分貯金ができていました。
ステージ2 美作街道〜関金温泉
街を抜けて、田園地帯を走ります。
晴れてきて、やや暑くなってきますが風は爽やかで心地よいレベル。遠くの山並みを眺めつつ淡々と進みます。
遥か遠くに、大山東壁が!あの裏側に回り込むなんて信じられません…。ここから人家のない地区をしばらく走ります。
そして、関金温泉に近づくにつれ、大きくなる大山の遠景。
歩道も広く車も少なく、とても走りよい区間でした。斜度は徐々にあがりますが、あっという間に第二チェックポイント ローソン関金温泉店へ。まだ貯金10分以上。
ここで、補給食とドリンクを大量買い。ハイドレに氷とポカリ。そして、ミネラルジェル、おにぎりにパン、お菓子など詰め込みます。
しかしこれ、結果足りなかったんです。また次で買えると思っていたら買えなかったわけですが。何が起きるかわからないのがウルトラ。舐めてはいけませんね。
ここまで約2時間、14キロ。Reiさんは、ここで腹部にやや違和感を感じていたとのこと。
ステージ3 犬挟峠登り(いぬばさり)
下蒜山と高松山との鞍部、犬挟峠に登る区間です。平均斜度は5%程度になるキツい7キロ。
国道313号には全長2600メートルのトンネルがあるため、回避して県道へ。車は国道に行くので、県道はガラガラで走りやすい。いい道でした。
この峠を超えたら蒜山高原です。坂がキツくなっていくために徐々にペースを落とします。これもレース戦略ですね。坂はがんばらない。長丁場なので特に重要です。
しばらく登ったところで小休止。モグモグタイムです。ウルトラは確実に補給が必要です。特に序盤で食べておかないと消化吸収される数時間後に結果が出てきますね。つまり食べておかないとスタミナ切れ。おにぎりを食べて一息。固形物を胃に入れました。
ややペースは落ちましたが、第三チェックポイント 犬挟峠展望台へ。約21km、ハーフマラソンですね。
ステージ4 蒜山高原東部エリア
峠越え直前でReiさんがペースダウン。腹痛です。歩きが入るようになり、下蒜山登山口向かいにある火葬場のトイレへ。
ここで回復、解決かなと思っていました。この辺りの判断は難しいですね。
そこから峠下り。ペースがややあがりつつ美作街道を右折。気持ちよく蒜山高原へ。
ここには自転車道があり、快適に走れます。隣の道は蒜山マラソンのコースなんだとか。蒜山名物スイトンが迎えてくれます。
しかしReiさんの腹痛がおさまりません。
第四チェックポイント 中蒜山オートキャンプ場で再度トイレに。
ステージ5 蒜山高原西部「ネタ投下」ゾーン
ここから、次のトイレを確認しつつ出発する流れに。ペースもしっかり落とします。キツい時は歩く、楽になったらランです。
この自転車道、サイクリング中の家族連れがたくさんですね。とても爽やかで健康的。気持ちよくあいさつを交わし、清々しい気分で走れました。
道の駅蒜山高原でまずトイレ。そして、例のネタ投下。
ウォーミングアップ完了!とやっていますが、実際はかなりキツい状況。11:30の予定時刻も遅れ始めていました。ソフトをパクつくように見えるReiさんですが、これは演出です。大変美味しい濃厚ミルクソフトでした。ごちそうさまでした…。
ここの辺りで、Reiさんはお腹にトイレットペーパーをテーピングで止めてカイロ代わりにしたそうです。これは効果的だった模様。エマージェンシーキットは思わぬところで役立ちますね。
そしてリスタート。徐々に回復したReiさん、ペースも戻ります。第五チェックポイント ツキイチパンに到着。残念ながら月一しかやっていないので休業でした。この周辺の広々とした高原の景色は雄大です。
ステージ6 大山蒜山スカイラインー蒜山サイド
ここから再度登りになります。平均斜度はまた5%に。大山蒜山スカイラインはほぼ歩行者なしなので、攻める走りの車の皆さんが通る区間。前後に気をつけつつ登っていきます。
とはいえ、広々とした道路なので、危険性はそれほどありません。
とにかく登って登っての7キロ。5%の登りは消費エネルギー25%増と言われますから、糖を使い尽くしていきます。暑さも体力を奪う状況。下痢をして、朝食のカロリーも失い、摂った水分や栄養を失ったまま走ると、知らず知らずのうちにガス欠を起こします。そして、それはすぐには気づけないものですね。
第六チェックポイント 鬼女台展望休憩所へ。フルの距離を通過。そして、トイレに直行です。ここでドリンク補給。ポカリで繋いでいきます。
例の豆ネタはここでした。
ステージ7 大山蒜山スカイラインー大山サイド
この辺りではReiさんも「絶対ダブルフルを走りきる」と何度も呟いていました。並々ならぬ闘志を感じます。正確な場所は忘れましたが、あまりに体に力が入らないとのことでナッツバーを摂ったReiさん。しばらくして、再度腹痛に見舞われます。
鏡ヶ成で峠をむかえ、大山環状道路に入ると下り基調に。しかし、ペースは上がりません。
下痢自体は治っても、エネルギー切れでは走れず、飴やポカリのカロリーでは足りない状況。しかも、コンビニも何もありません。せめてジェルがあれば…。
気力で第七チェックポイント こだちしいたけ園通過。49キロ。
ステージ8 奥大山
奥大山のおいしい水工場が立ち並ぶゾーン。一度標高630メートルに下ったのち、今回コース最高地点約1000メートルまで駆け上がる厳しい区間です。
下りはまだ動く体も、上りになると一気にペースダウン。ふらふらになるReiさん。
それでもどうにか奥大山スキー場へ。トイレ直行。ドリンク補給。
雄大な大山を一望できるので、せっかくだからということでシャレた一枚を撮っていただきました。かっこいい?
そして、出発前に再度トイレへ。もはや、水分も受け付けない状況。ピンチです。
残り距離を全て早歩きで歩いたとして最終電車にギリギリとなり、ここでダブルフルを諦めることを決断。タクシーも提案しましたが、まだ駅まで足で向かいたいとのこと。ショートカットルートに変更します。
登りは基本歩きに。時折り休憩を挟みつつ進みます。鍵掛峠でトイレに立ち寄り、再度歩を進め、第八チェックポイント 文珠堂に。もはや限界を超えていました。気力だけで前に進むReiさん。リタイアを決断します。
ステージ9 大山西壁
暮れる夕日に照らされる大山西壁を右手に眺めつつ、大山を下ります。
気温も下がり、寒気と戦いつつ下る状況。タクシーを調べつつ、Reiさんの意向でスキー場まで進むことに。
約61km。桝水高原スノーパークでリタイア。
タクシーで伯耆溝口駅へ。電車を乗り継いで倉吉駅に戻り、帰路につきました。
その後&まとめ
道中で反省会。出た内容を列挙しておきます。
原因 腹痛は、緊張や食べすぎ、またお腹の冷えがあったのではないか。ハンガーノックは補給不足=下痢による栄養不足と脱水。
対策 カーボローディングは前日夜と当日朝の量をやや控えて、消化の良いものに絞る。
咀嚼や保温に努める。ミニカイロを貼る。
テーピングなどエマージェンシーキットは秀逸。
高機能レインウェアは必携。
ブドウ糖ジェルなど自分に合ったジェルを見つけておき、非常食としてハンガーノック対策。
コンビニだけでなく、自販機やトイレ箇所も可能な限り事前に把握。などなど。
ダブルフルマラニックとしては失敗に終わりましたが、萩往還=高低差のあるウルトラ対策としては貴重な経験をたくさん積むことのできたランになりました。その意味では大成功。またリタイアの決断ができたのも良かったと思います。
情報はいくらでも手に入る時代ですが、自分に合った方法は自分にしかわかりません。こればかりは、体験してみないといけませんね。
今回の経験を踏まえ、練習や準備に磨きをかけていきたいと思います。景色は素晴らしいコースでした。いつかリベンジできたらいいですね。