紙ペーパー師匠のぺらっぺらジョグ日誌

ホイミンとマラソンするおっさんの日記

四国霊場八十八ヶ所お遍路マラニック その7【土佐国編②】〜津波でも決して壊せないもの

前回の年越し遍路からはや数ヶ月。大会目白押しのランウィークが終わって落ち着いたので、えびだいのためのロング走を兼ねてお遍路マラニック

計画

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今回は室戸岬スタートで、25,26,27番を打つ計画です。

ランのフィニッシュ地点近くに車を停めてバスで室戸岬に移動、フィニッシュ後は車で戻るいつものパターン。

27番は調子次第。ルートによりますが、だいたい36-46kmを想定します。

はじまりはじまり

5時には岡山を出て、高知道経由で唐浜休憩所というスポットに到着。
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綺麗なトイレもあるし、目の前には太平洋。天気が心配でしたが、雨も降っておらず一安心…したのは、ここまででした…。

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本日のギア

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白衣風チームTシャツに、雨の予報だったのでレインウェア。ランパンは夏仕様。ロードがメインなのでズムフラです。

今回は距離も短いので軽装で。

スタート地点へ

バスで室戸岬に向かいます。

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バス停が目の前という好ロケーション。

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電子マネータッチパネルがあってSuica対応だ!と思ったら、腰の低い運転手さんが激謝りされつつ「ですかしか使えないんですー」と。

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そう、ですか。(爆笑)

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龍馬カードは完売ですか、そうですか。

バスは室戸岬に向けて走ります。本日走るルートですね。

窓からたまに歩き遍路の方を見かけます。ワクワクしてると雨がポツポツ…サーっ、ザーっ、ドバダバ〜…お、おい。天気予報どうなってる…

それはともかく、バスの方はとっても素敵な運転手さんで、整理券の印刷不備を丁寧に対応してくださったり、降りるバス停を聞いてくださったり。下車時には「良いご旅行を!」って送り出してくださったんですよね。f:id:RunTazzo:20230605164743j:image

良いご旅行スタート!

吹き降りの土砂降りやんけ!

 

嵐の津照寺

信号待ちの時、前を向けないくらいの吹き降りを喰らいます。日頃の行い!
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そんな中、前回のフィニッシュ地点であるスカイライン入り口へ。ここの景色は素敵。山が近いです。
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目指すは津照寺。さすがに歩き遍路してる人はいません。というか、人っこ一人いません。嵐だもん。
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黙々と走ります。もう全身びっちゃびちゃ。お遍路Tシャツを披露することもできず、ただ前へ。

旧道を走る予定でしたが、車が通ると危険なレベルなので国道側を走ることに。前回は腰痛で苦しんだReiさんですが、今回はすっかり良くなって軽快にラン。

断続的に、山側に降りる階段があります。(写真忘れた)一段高いところを走るんですが、道路自体が堤防になってるんですね。集落へは階段で降りる様子。

自販機を見つけて温かいコーヒー……全部「つめたーい」でした…。耐えながら、そんなところを5キロも走っていると少し開けた街に着きます。
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見えてきました。津照寺。室戸三山の一つ。別名、津寺。明治の「改革」とやらで廃寺になり復活を遂げた経緯もあり、とても小さなお寺です。

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参道も大雨で誰もいません…。歩き遍路組はさすがに少ない模様。

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本堂へ登っていくとお遍路さんが。少し安心。車遍路さんのようでした。
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街中ですが、お寺から眺める景色はちょっとおしゃれです。太平洋が見えます。天気がいいと26番札所の金剛頂寺も見えるそうです。

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第25番札所 宝珠山 真言津照寺
(ほうしゅざん しんごんいん しんしょうじ)

打ちました!ジップロックを新調しないと水漏れが怖いな…。

ここ、納経所の前に貼り紙がすごくたくさんで、特にマスクしろ、写真撮るな、が何枚も…。写真に収めたかったんですが、ちゃんと貼り紙ルールに従いました。なお、駐車場にも「料金払え、撮影してるぞ」系の貼り紙。過去に何かあったのかな…。

 

涙のたい焼き

微妙な空気感と大雨の中、26番札所の金剛頂寺へスタート。5キロほどしかありません。ですが、もう全身ズブズブ。走りづらい…。

遍路道は古い住宅地のようですが、少なくとも2割は空き家かなという雰囲気です。
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人の姿は見えませんがたまに車が行き交います。その中の一台、白い軽トラが我々の目の前に止まります。窓が開き、男性が声をかけてきました。

「これ、あげるから、食べて!」

ふと見ると、二尾のたい焼き。思わず、「ありがとうございます!」と受け取ります。温かい!

うわぁ、お接待だ、うれしいぃ〜と笑顔になります。すぐに窓を閉めようとするので、遍路の基本、次のお寺への道確認をしました。

「すみません、金剛頂寺はこの道であってますか?」

すると、

「あー、お遍路さんか!

それなら、これを納めてくれんか?年寄りに託ったけど行く時間なくてな。」

小銭が詰まった小袋をポンと渡されます。

遍路の解説本で読んだことはあります。賽銭を渡されることがあると。あぁ、これがそういうことなのか!

頭を下げてお礼を言うと、軽トラはあっという間に行ってしまいました。

空き家の軒下で食べたたい焼きの美味しいこと。こんなに暖かく甘いたい焼きは食べたことありません。

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食べながら、気づきます。あの男性、私たちがお遍路さんだと知らずにたい焼きをくださったこと。

お接待かと思っていましたが、違っていました。大雨の中を走っているから応援としてくださったのか、お腹を空かせているように見えたのか、それはわかりませんが、今回の遍路の忘れられない出逢いになりました。

金剛頂寺トレイル
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心だけでなく、お腹も満たされて走りにも元気が出ます。海岸沿いに走っていくと遍路小屋が。ミタニ建設工業という会社の厚意で建てられた小屋のようです。中では歩き遍路の方が簡易テントを張って休んでました。トイレをお借りして小屋をあとにします。こんな綺麗な休憩所を管理していただくとほんと助かりますね。
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金剛頂寺への上りになります。
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山の方が風も雨も弱く、走りやすいくらいです。
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今回の遍路もいい感じの古道を走ることができます。

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次第に山道へ。ズムフラはやや滑りますが距離はそうありません。しばらく登っていくと、金剛頂寺です。
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駐車場も貴重な収益源なんでしょうね。
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山門を抜けた境内はこんな雰囲気。雨も弱まってきました。
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また、金剛頂寺には霊宝殿なる建物が昭和に新築されており、空海の遺品が収められているそう。重要文化財正倉院様式らしいけど、鉄筋コンクリート正倉院。うむ。なお本堂もコンクリート造です。
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納経所にはイケメン空海肖像画が。

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第26番札所 龍頭山 光明院 金剛頂寺
(りゅうずざん こうみょういん こんごうちょうじ)

打ちました!

そして、託けられた浄財をお寺の方に渡します。

「…あ、はい。」

それだけでした。

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綺麗な宿坊もありました。次の神峯寺までは距離があるので、室戸三山を打ってここで泊まる方も多いんでしょうね。
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見どころの多い金剛頂寺ですが、先を急ぎます。
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あじさいが咲いていました。でも、ゆっくりしていられません。17時の営業終了までに神峯寺に辿り着かなねば。
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今回もありました。目を疑う遍路道。油断してると見落とします。
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雨のためにぬかるんでいて、すべるすべる。
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ところどころに水がたまり、ヤブもあるマムシ注意な小径を下ります。時間があれば、空海が修行したという不動岩に立ち寄る広い道を下るんですが、時短でハードトレイルに。

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ちなみに、これが不動岩だそうです。Googleマップから。
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滑りまくりながら下り切ると、また国道に合流。スリップ警戒ランは筋力使いますね…

海岸線の街並み

しばらく海岸線を北西に進みます。

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雨はおさまり、走りやすくなりますが、同時に気温も上昇。腹も減るし、水分をとればトイレにも行きたくなる。
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賑わっているハンバーガーショップ発見。トイレ借りて補給も…と思ったんですがトイレありません、とのこと。最寄りの公衆トイレにどうぞということなので、そのままラン。1kmさきくらいにありました。スタッフもここまでトイレにくるの?
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後で書きますが、走っていて気づくのは空き家の多さ。
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あまり撮るものでもないかもしれませんが、朽ち果てた空き家が並びます。
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今回の特徴的な景色になりました。
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トイレは遍路の悩みどころの一つ。親切な看板がありました。助かりますね。
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前回の遍路では暗くてわからなかった太平洋を感じながら走ります。
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この辺りから空腹との戦いに。ザックの中には最低限の荷物だけ。行動食がない…。小さな釣具屋兼商店に立ち寄りパンを食べた以外はドリンクだけで走ります。

羽根岬を越えて
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写真は曲がる目印の病院。良い雰囲気です。

峠を前に、コンビニがあったらラーメン食べようということになり、がぜん元気が出ます。空海は何を食べたんだろう。
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古道へ。
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不整地の方が当時を想像できてワクワクするのが遍路マラニックですね。
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今回も標識に助けられながら進みます。
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標高は100mちょっとしかないのですが、雨のぬかるみで進みにくい…。
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遍路道を満喫できました。
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濡れた石畳はまるで萩往還道。長州と土佐のコラボ?幕末の志士はこういうのが好きだったんでしょうか。なんてね。

雨上がりのロング

また国道へ。この辺りで室戸市から奈半利町に入ります。
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雨も上がりました。たまに歩き遍路さんを抜いてのラン。Reiさんは他のお遍路さんとお話もしながら走ってました。私は…余裕なし。お腹ぺこぺこで…。
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なんだろう。遍路道ではこんな石碑をよく見かけますが不勉強でよくわかりません…。もっと調べてきたら楽しめるんでしょうね。

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気がつけば残り10km。意外とあっという間に神峯寺です。
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なにやら歴史ある建物を発見。高田屋といえば岡山では老舗の焼き鳥屋くらしき高田屋ですが、こちらは明治の樟脳業だそう。

三菱創業者の岩崎弥太郎が高知で樟脳を盛んに製造していたというので、その関係なんでしょうか。
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徐々に空が明るくなり、ちらほらと空がのぞくようになる頃、ついにローソンへ。

喜びのあまり、写真撮らずにラーメンを満喫しました!
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四国一小さな町。ほんとにあっという間の田野町

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でも、とてもきれいな町でした。

今回のハイライト、神峯山

お隣の安田町に神峯山はあります。四国自然歩道で登るつもりでしたが、時間がないのでロードの長い通常ルートへ。走距離も短くすみます。
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27番札所 神峯寺が近づいてきます。残り3.5キロ。時計は残り52分。お寺は、神峯山中腹の標高450メートルにあります。岡山でいうとだいたい金山くらい。ランだけなら余裕ですが、トレイルはあるし、団体がいたら行列必至の納経所です。足を速めます。
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棚田を眺めつつラン。雨の後できれいでしたね。
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陽が出て急に暑くなる山道。白衣シャツが気持ちいい!
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ダッシュ
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やがて山道へ。雰囲気の良いトレイルです。「真っ縦」という別名も。ロードがグネグネなんですが、トレイルはお寺に真っ直ぐ伸びているので真っ縦。高知唯一の遍路転がしという話も。いい傾斜です。しかし時間が迫る。
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ズムフラのスリップが辛い…。岩崎弥太郎の母が息子の出世祈願に21日間も参拝したそうですが、かなりの脚力ですね。
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Reiさんには申し訳ないんですが、札所は17時きっかりに閉まるので、とりあえず私だけダッシュして納経所に行くことに。次回もう一度登るのは避けたい…。
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残り17分。
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仁王門に到着!間に合った!団体客の行列に並びましたが、大丈夫でした。私の後はほぼ誰もおらずすぐ閉店。働き方改革

高知の札所も4ヶ所目になりますが、どこも納経所が静かというか、徳島で楽しみだったお寺の方とのおしゃべりがありません。筆運びを見たいところですが、それも見えない位置だったり。地域のカラーなのかな?

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第27番札所 竹林山 地蔵院 神峯寺
(ちくりんざん じぞういん こうのみねじ)

打ちました!

山ではダッシュしたんですが、数分でReiさんに追いつかれたのはナイショです…。
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空海ゆかりの湧水は飲めそうなものは全部飲んでいきます。今回は後半暑かったので美味しかったですね!ペットボトルに詰めて帰路の水分にしました。衛生的には微妙ですが。
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札所はどこも良い雰囲気なんですよね。

本堂に祀られる本尊は十一面観音像。その端に2体の地蔵が。仏像にはこれっぽっちも興味がないんですが、この地蔵には立て看板で解説があったので読んでみました。

なんでも太平洋戦争である島から生還を果たした方が、亡くなった同胞のために地蔵を彫ったのだとか。どんな気持ちで彫られたんでしょうね。
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私たちの他にも多くのお遍路さん。この時間帯だと、車遍路さんがメインですね。
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これ、歩いてる空海像。歩いてるバージョンは珍しいとのこと。Reiさん情報。
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大師堂には空海の一生を開設したパネルもありました。Reiさん、真剣に読んでます。

中国でいい出会いがあったのか、恋愛オッケーになって帰国したんですね、空海。他にも筆を選んだ話も。人間味溢れてて、こういうの好きです。
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帰ります。下りは歩くトレランの会。下りは可能な限りロードで。
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膝ダメージが怖いので、丁寧に下ります。体を冷やさない、膝を壊さないペース。
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次の札所は36キロ先。次回はいきなりのロングになりそう。
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山を降りるとすぐに唐浜休憩所です。

本日の遍路マラニック、フィニッシュ!

時計の動かし忘れがあったので実際の走行距離は約40キロでした。これくらいがコンパクトで楽ですね。

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次回はここ唐浜から28番札所、大日寺を目指すことになります。

難関!ごはん探し

さて、風呂に行こう。雨と汗でドロドロです。
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マラニック中、お菓子補給したローソン辺りを通ります。そこでまた土砂降りの雨に。お風呂は田野町の「たのたの温泉」へ。
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「この当日券は、当日にしか使えない当日券なんですね。」うん、セクシー。

汗を流して、温冷浴してさっぱり。さて、高知で美味い魚食べて帰るぞ!

しかし、ここからお店が見つかりません。そもそも、20時までやってるお店がぜんぜん見つからず…。見つけても営業時間内なのにもう閉まってたり、オーダーストップがやたら早かったり、そもそもやってなかったり…。憤懣やるかたなし。

延々車を走らせ、高知工科大を過ぎてやっと見つけた夜もやってるお店、マリソル。おしゃれなカフェです。

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鰹のタタキでも鰻でもないけど、美味い!

マリソル最高!

高知にお越しの際はぜひ土佐山田駅徒歩30秒のマリソルへ!

次回はお店チェックをしっかりしておきたいです。帰宅は深夜になりました、とさ。

おっさんのごたく

前回から高知に入り、太平洋沿岸の美しい景色の中を遍路しています。今回、とくに特徴的だったのは空き家の多さでした。過疎地域ならどこにでもある光景ですが、顕著に思えました。そして、対比的に堤防や津波避難タワーが目につきます。

これに南海トラフ地震、その予測が関わっていることは間違いないでしょう。ある研究によれば大きな被害が予想される地域では予想が発表された後、有意に転出が増えているとのこと。その状況にあって、住民のいなくなった土地,建物を活用しようとする人が多くはないだろうと容易に推測できます。

今回ランのほぼ全域が、津波防災地域づくり法の津波災害警戒区域。買うにしろ借りるにしろ、その地域で住もうとすると必ず不動産屋さんから重要事項としてそのことが説明されるそう。古民家カフェのランニングチームにいる身としてはいろいろ考えてさせられます。

もちろん、地震の予測のせいで景観が……なんていうつもりは微塵もありません。命を救うための命懸けの研究が導いた成果です。そして、それに基づく種々の政策…堤防、津波避難タワーetc……ついても最善策でしょう。代案も考えつきません。30年以内に大きな地震津波が来る。それなら費用をかけて取り壊すことも難しいです。少なくとも自分なら何もできない。

ただそこには先の見えない不安があり、空き家が立ち並ぶ。複雑な議論をするつもりはありません。未来の一端を知ってしまうことの難しさを見た気がします。

大雨の中、たい焼きをいただいたことは、喜びと共に驚きでもありました。

「お遍路さん」の接待は空海を接待すること。だから接待された…のではありません。ただの他者への親切、でした。

まさか接待文化をして偽善などというつもりは毛頭ありませんが、あの男性の中には偽善的なものは一切ない。純粋な利他心でしてくださったんだと思います。

それが遍路の地に住む人だからこそのものなのかどうかはわかりません。しかし、少なくとも私たちは、この地にどんな災害が来ても、彼や彼の周囲の人々がどうか助かってほしいと強く願わずにはいられませんでした。

この強い気持ちや目に見えないつながりを人々にもたらしたものが空海だとするなら、やはり遍路という大きな装置を残した空海は偉大な巨人だったといえるでしょう。

地震はいつか来て確実にこの地に苦難をもたらすのだと思います。それでも、どれだけその破壊が酷いものであっても、この地を訪れた人々の中の遍路での想いの一つ一つは決して壊されることなる生き続ける。今回は、それを確信した遍路の旅でした。

次回は安芸市を抜け、28番大日寺へ向かいます。

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