2022/02/20
Reiさんから大型企画の依頼がありました。
四国霊場八十八ヶ所をランで周りたいというのです。要望を踏まえて基本コンセプトを決めました。
・1番札からの順打ち
・納経帳に印をもらう
・可能な限り旧遍路道を使う
・1回最長60キロ程度まででやめる
・次回は、前回切り上げた遍路道から再スタートする(ショートカットなし)
つまり、「遍路道を全て走破」するように計画していきます。
慌ててガイドブックを買い、初回ルート策定。
阿波大谷駅からスタートし、可能なら11番札藤井寺を周り、鴨島駅まで47キロラン!
朝6時に岡山を発ち、本日のフィニッシュ地点である佐古駅近くの駐車場へ向かいます。
とくしまマラソンのフィニッシュ会場からもほど近い位置なんですね。
今回もakippaのお世話になります。車を停めたらコンビニに寄ってから駅へ。
眉山にあいさつしたら、阿波大谷駅へ向かいます。佐古駅で、列車待ちしている男性と少しお話をしました。その方も遍路するそうで、今日は4番大日寺にお仲間とバスで向かうとのこと。こういうお遍路さん同士の交流も楽しみです。
徳島は電化されていないので全て「列車」
ごとごと揺られて吉野川を越え、鳴門の地へ。
1200キロを超える旅ラン、スタートです。
ギアは、ライトレーサー、ユレニクイ、ワークマンタイツ、トリムテックス、mont-bellザック、ユニクロウインドブレーカーといういでたち。白装束ではないです…。
Reiさんはズムフラかな。防寒重視でした。
1番札所は板東駅が最寄りですが、番外霊場と呼ばれる空海ゆかりのお寺などを見学しつつ、旧撫養街道を進むことにしました。昔のお遍路さんは鳴門に降り立つとこの街道を延々と歩いてここまできたはず。もちろん空海自身も。
以前の様子を偲ばせる古い醤油屋さんがあったり、大谷焼という焼き物の看板があったりと歴史を感じつつ進みます。
まず訪れたのは種蒔大師東林院。空海が鋤を取り種を蒔いたとか。1番札所霊山寺の奥ノ院でもあります。
続いて、空海が説法したと言われる別名「談義所」の十輪寺。ここを過ぎるとだんだんとお遍路らしい雰囲気が現れてきます。
路上に遍路道を表すグリーンラインがあったり、休憩所が見えたり。
まぁ、このグリーンライン、板東駅から1番札所までしか見当たらなかったんですけどね…。
霊山寺の参道です。はるか遠方に霊山寺が見えます。すでに佇まいがほかのお寺と違うんですね。
そして到着。1番札所竺和山霊山寺(じくわざん りょうぜんじ)。5.5キロ。
境内の規模も歴史の深さもまるで違っていて、ここだけ周りの世界と空気感まで異なりました。
錦鯉が泳ぐ立派な池もあります。やはり1番札所なのでたっぷり儲け……ゲフンゲフン
遍路といえば納経帳。御朱印帳みたいなものですが、初めからお寺の名前89が全て書かれていて、そこに墨書と御朱印をもらう巡礼専用の帳面です。
併設してあるショップで購入しましたが、初めから霊山寺の御朱印は記入済み。御朱印代金300円もセットになってました。
また、本来ならお遍路さんは作法が細かくあって、手を洗うとか大師堂にもお参りするとかお線香を何本あげるとかややこしいんですが、我々はあくまでラン目的ですので、納経帳もあくまで「施設使用料と記念品」という形。
宗教色はほぼほぼ0での遍路ランです。
ちなみに「ご本尊カード」はコレクターズアイテムとしていつでももらえるようで、「空海のことばカード」は期間限定。5月まで配布とのこと。カードホルダーみたいなのも売ってますし、「額に入れて家宝にして」とのことでした。うんうん
ここでランナー集団に出会ったのですが、朝のおじさんではなかった様子。その集団に導かれるようにお茶屋に入り、「あわくった」なるおまんじゅうで腹ごしらえ。焼きたて熱々が食べられます。これがやわやわにやわらかい上にホカホカあんこで美味い!
よくわかりませんが、遍路は札所を「打つ」と表現するんですね。
旧撫養街道を西へ。グリーンラインはありせんがカーブミラーや電柱などに遍路道シールがあって、そこそこ迷いません。1キロちょっとで2番札所極楽寺が現れます。7キロ。
ぼろぼろじゃん、と思ったらこれはただの石柱門。参道を進むと仁王門が。
仁王像があったら仁王門。なければ山門というみたいですね。
鐘をつくのも参拝の一部なので、お遍路さんがいると鐘の音が耐えず聴こえてくるのが札所です。
Reiさんもせっかくだからということで日頃の鬱憤を鐘に…。まだ体力があったので突いてますが、以降の札所では素通りでした。
ドライブ遍路な人たちがしばらくご一緒だったのも面白いポイント。写ってる人たちも1番から見かけてましたね。
2番札所、日照山極楽寺(にっしょうざん ごくらくじ)、打ちました。
さらに西へ。ここから遍路道がいい感じに古道混じりになっていきます。
お墓の間を通ったり、田んぼの畦道を進んだり。空海もここを通ったのかな、そんなことを考えながら走ります。
畦道を抜けてちょっとした丘を越えると、ちょうど梅の時期なので、綺麗な景色に出会えました。
梅畑を抜けると3番札所金泉寺です。9.5キロ
義経が弁慶と共に戦勝祈願に立ち寄ったとか伝説が残っていまして
なんでも、この岩を弁慶が持ち上げたっていうんですが、ユンボでもないと絶対無理だろ…
札所には必ず弘法大師を祀った大師堂があるんですね。山門、本堂、鐘楼、納経所もあるし、加えて塔や薬師堂もあったり奥ノ院もあったりですから、札所は歴史的な建物の宝庫。古寺ファンには堪らないと思います。
3番札所、亀光山金泉寺(きこうざん こんせんじ)、打ちました。
ここから4番まではしばらくありまして、道中見所を訪ねます。まずは大クス。樹齢400年くらいだそうで、遍路道の歴史からするとまだまだ若造。
それでもお遍路さんにはお馴染みの名所だそうです。
金泉寺奥ノ院、宝国寺。
こちらも同じく金泉寺奥ノ院の愛染院。足にご利益があるそうでワラジがたくさん祀ってありました。
ここから遍路道は初めての峠越えへ。ほんとにここ通っていいの?という場所を進みます。
道なのか?
しかも、冷たい風に加えて小雪も吹きつける悪天候。体力を奪われました。
↑道に見えない。
でも、ちゃんと標識が。テンションアップ!
いい雰囲気の小径を登っていくと、4番札所、大日寺です。14.4キロ
真言密教といえば本尊が大日如来なので、大日寺ってたくさんあるんですね。ここは最初の大日寺。
ファミリーお遍路さんがいたり、白装束ではない歩き遍路さんがいたりで、賑やかな大日寺。鐘楼が山門の二階にあるようで頭上で鐘の音が。また、大改装した模様でとっても綺麗でした。
4番札所、黒巌山大日寺(こくがくざん だいにちじ)、打ちました。
引き返して山を下り、5番札所へ。途中、おしゃれなベーカリーがあったのですが、日曜閉店…。
まず、五百羅漢へ。5番札所の奥ノ院で、同じ敷地なんですが先にここに到着します。
木造の羅漢像が立ち並んでいるそうですが拝観は有料なのでスルー…
5番札所、地蔵寺です。15.8キロ
季節なら大銀杏が出迎えてくれるそう。そして、本堂には写真付きで五百羅漢見てね!200円!のポスター…。うん、ナイス商魂。
5番札所、無尽山地蔵寺(むじんざん じぞうじ)、打ちました。
300円で許してね。
だんだんとお遍路ランにも慣れてきまして、この手の石碑や看板、ステッカーを目ざとく見つけながら、スマホの地図とも照らし合わせつつ進みます。ローソンで肉まん補給などしつつ5キロほど長めのラン。
21.4キロ、6番札所、安楽寺です。空海が温泉のご利益を伝えたとかで温泉山。この辺りでツアーバスお遍路さんとデットヒートを繰り広げます。10人くらいの団体なので、納経所で先行されると行列待ちが恐ろしい。負けられない戦いがここにある!
天候も回復。気持ちよい青空なので360度カメラで遊んだりして。
6番札所、温泉山安楽寺(おんせんざん あんらくじ)、打ちました。
地図からもわかるとおり、次は近いです。
だいたい6.7分くらいで7番札所、十楽寺。22.4キロ。バス遍路さんに先行!
山門をくぐると、モダンな作りのレストラン?が併設。
階段上にもう一つ門。夫婦円満の愛染明王が祀られてるだけあって、縁結びの門があり、中を通ると結ばれるとかなんとか。
そして、その反対側は「縁切り」の門。とんでもない神様だなと思ったら、病魔や厄との縁を切るとのこと笑
7番札所、光明山十楽寺(こうみょうざん じゅうらくじ)、打ちました。
8番までは5キロほど。広域農道や高速高架下などを通る楽なラン。天候も良くサクサク進みます。
仁王門はこの距離からでもわかる大きさ。
熊谷寺、27キロです。八十八ヶ所の中でも最大級の大きさだとか。
また、四国で最古とも言われる多宝塔も。
8番札所、普明山熊谷寺(ふみょうざん くまだにじ)、打ちました。ここでも先行!
ここで納経所の人が「お車ですか?」と。
壁にもトイレにも「駐車場料金払ってね」の貼り紙がありまして、人力で徴収している模様。
こちらがランニングで来たことを伝えると、えぇ、すごい!とエラく驚かれました。遍路って歩きがデフォルトじゃないの?
寒かったでしょう、大変だったでしょう、と。とても労われました。歩き遍路って、珍しいんですね。この季節だし。
気をよくして、足取りも軽く次の札所へ。
畑のような景色の中に木々が見えたら29.3キロ、9番札所法輪寺です。
ここの駐車場の前に古民家茶屋的なお店があり、心惹かれつつも取り敢えず境内へ。
向かって右から大師堂、本堂、納経所。
ここでも歩き遍路を珍しがられつつ…
9番札所、正覚山法輪寺(しょうかくざん ほうりんじ)、打ちました。
辛抱たまらず、焼き芋の看板へ直行。shibaki王子が好きそうな古民家?カフェへ。
焼き芋100円の手書き看板がいい味出してます。
中に入ると、おじいちゃんがいそいそと現れて、芋を選んでくれます。2つお願いしたら、もう小さいのしか入らないんだ(入荷しない)と言いつつ、袋に4本ほど入れてくれました。
その場で食べさせてもらっていると、どこから来た、どうやってきた、という話になり、歩き遍路を伝えると、それが本来の遍路の姿やけんなぁ、と。聞けば、車やバイクばかりなんだそうです。
そして「茶、飲んでき」とお茶を淹れてくれました。
さらに、芋は好きなだけ食べていき、と。
お茶もおかわりしていき、と。
歩き遍路への自然で柔らかな敬い。その理由や年齢は問われることなく、ただもてなされる。これが、お接待の心なんだな、と身も心も温かくなりました。
さて、一路、10番へ。
iPhoneのバッテリーが切れかけ、苦しい展開。次回はモバ充持参しよ…。写真は小豆洗大師。空海が小豆を炊いて食べたので小豆洗大師。もう、なんでもありがたい。
今回の最西端、32キロ過ぎで北に折れて坂を登ると見えてきた山門。切幡寺です。
到着!
と思ったら大間違い。
「是より三三三段」
誰かが福山の1/4とか言うので泣きながらダッシュ。
登り切ると遥か遠くに吉野川が……見えない。大塔まで行けば見えたんですが、先を急ぐので省略。
本堂と納経所。意外と人が訪れてました。景色も楽しめますしね。ツアーバスお遍路さんもきっとあとから来るんでしょう。
10番札所、得度山切幡寺(とくどざん きりはたじ)、打ちました。
ここで16時。11番まで10キロ。納経所は17時までと聞いていたのでちょっと…いや、だいぶ厳しいタイミング。しかし、多少遅れてももしかしたら納経はしてくれるかも。と、諦めずに走ることにしました。今回の最速ペースでラン開始です。
山を下り、藤井寺の標識を目印にしつつ四国三郎=吉野川を目指します。徳島の地形を形作るのは中央構造線に沿う吉野川。徳島市自体も巨大な中洲ですよね。地図ではわかりにくいですが、藤井寺に続く遍路道が通るところも巨大な中洲=川中島になっていて善入寺島というそうです。なんと日本最大。まず北側の大野島橋を渡ります。
潜水橋なんですね。高知では沈下橋と言いますが、徳島は潜水橋と呼ぶ様子。
中洲は広い畑です。切幡寺の石段で足を使ってしまってますが、ここは踏ん張りどころ。5分台で押していきます。
続いて、川島橋。これを渡れば吉野川市です。潜水橋は狭いですから車が来たらすれ違えません。今回も前から車が来てしまい、途中の離合スペースに待避して交わすという経験ができました。
40キロを過ぎる頃には、時刻は17時をまわり、もはや閉店(笑)それでも、もしかしたら、と思って11番札所、藤井寺(ふじいでら)にラストスパート。
17:15くらいでしたか、藤井寺到着。42.5キロ。しかし、しっかり閉店でした。境内を掃いてる住職が気を利かせて御朱印を…なんていうことはありませんでしたとさ。
走り切った達成感と失意の入り混じる中、鴨島駅へ。今回の遍路ランはここにて終了です。しめて45.5キロでした。
列車で佐古に戻り冷えた体を湯船に投げ込みます。
お風呂の後だと徳島グルメのお店が軒並み閉まっていて、仕方なく大阪王将で
地域限定鹿肉デミグラスソースのジビエオムライスをリカバリー飯に!うまい!
四国八十八ヶ所ラン遍路第一回は、企画から実行まで短時間にやった割には成功でした。
さすが1000年続く?遍路だけあって、完成されたコースですので、心配はさほどありませんでした。霊場と言われる八十八ヶ所の寺院は、大量のお遍路さんをさばく中で、かなりビジネスライクになっているなぁというのが正直な感想です。動線も支払いも案内看板もよくできていて、迷いません。その一方で、大型バスで遍路客を呼び込み、納経料や拝観料、駐車場代に各種グッズ、ガチャガチャなど経費と金儲けの境目が曖昧だなと感じるところも多々あり。とくに藤井寺のお役所的な17時下校…もとい17時閉店には残念な気持ちになりました。統一した基準を設けて負担を減らすという理解はできるけど、歩いてきたお遍路さんが15分で門前(門中?)払いに合うのはどうなの?と感じます。
他方、遍路に対するみなさんの温かいもてなしやつながりに、ほっこりする場面がやはり多かったのも事実。焼き芋おじちゃんはもとより、他のお遍路さんやコンビニの店員さんまで親切で気持ちよく回ることができました。
次回は、藤井寺からスタートし、徳島編最大の難所と言われる「遍路ころがし」焼山寺にチャレンジします。ほぼトレイルなのでどうなることやら。今回の反省を踏まえつつ、楽しく回ろうと思います。